医療裁判の動向
医療裁判の動向
1.医事関係訴訟事件の最近の動向
(1)医事関係訴訟事件の受理件数及び平均審理期間
最高裁判所事務総局がまとめた医事関係訴訟事件の最近10年間の受理件数及び平均審理期間の推移は、表1のとおりである。
過去の昭和51年から昭和54年までは230件台ないし250件台、昭和57年から昭和60年までは250件台ないし270件台で推移した後、昭和61年から平成2年までは330件台から360件台であったことと対比すると、まさに年々増加傾向にあり、最近10年では約2倍に増加していることがわかる。
また、平均審理期間は、専門的知識に基づく判断が必要な複雑な案件が多いことから、民事裁判全体に比べて長期化する傾向にあるが、近時最高裁が医事関係訴訟委員会を設置するなどして訴訟の迅速化を促進していることもあって、短縮傾向にある。
■ 表1 (平成5年〜平成14年)
| 年 度 | 新 受 | 既 済 | 未 済 | 平均審理期間(月) |
| 平成 5 年 | 442 | 347 | 1,352 | 42.6 |
| 平成 6 年 | 505 | 392 | 1,465 | 42.0 |
| 平成 7 年 | 484 | 426 | 1,523 | 39.1 |
| 平成 8 年 | 572 | 500 | 1,595 | 37.5 |
| 平成 9 年 | 593 | 527 | 1,661 | 36.7 |
| 平成 10 年 | 622 | 584 | 1,699 | 35.3 |
| 平成 11 年 | 663 | 569 | 1,793 | 34.6 |
| 平成 12 年 | 775 | 690 | 1,878 | 35.5 |
| 平成 13 年 | 814 | 725 | 1,967 | 32.8 |
| 平成 14 年 | 896 | 853 | 2,010 | 30.4 |
(2)医事関係訴訟事件の終局区分別件数及びその割合
同じく最近10年間の終局区分別の件数及びその割合の推移は、表2のとおりである。
判決率は、10年間の平均でみると41%であり、概ね横ばいで推移している。また、和解率は、10年間の平均でみると47.5%となっており、医事関係訴訟事件の解決において和解が果たしている役割は、通常訴訟事件以上に大きいと言える。
■ 表2 (平成5年〜平成14年)
| 判決 | 和解 | 請求の 放棄 |
請求の 認諾 |
取下 | その他 | 計 | ||
平成 5 年 |
件数 比率 |
132 38.0 |
173 49.9 |
2 0.6 |
0 0.0 |
20 5.8 |
20 5.8 |
347 100.0 |
平成 6 年 |
件数 比率 |
178 38.0 |
174 44.4 |
0 0.0 |
0 0.0 |
21 5.4 |
19 4.8 |
392 100.0 |
平成 7 年 |
件数 比率 |
172 40.4 |
198 46.5 |
2 0.5 |
1 0.2 |
29 6.8 |
24 5.6 |
126 100.0 |
平成 8 年 |
件数 比率 |
176 35.2 |
259 51.8 |
1 0.2 |
0 0.0 |
29 5.8 |
35 7.0 |
500 100.0 |
平成 9 年 |
件数 比率 |
193 36.6 |
278 52.5 |
1 0.2 |
0 0.0 |
27 5.1 |
28 5.3 |
527 100.0 |
平成 10 年 |
件数 比率 |
234 40.1 |
285 48.8 |
3 0.5 |
0 0.0 |
29 5.0 |
33 5.7 |
584 100.0 |
平成 11 年 |
件数 比率 |
231 40.6 |
267 46.9 |
3 0.5 |
0 0.0 |
37 6.5 |
31 5.4 |
569 100.0 |
平成 12 年 |
件数 比率 |
304 44.1 |
317 45.9 |
1 0.1 |
0 0.0 |
39 5.7 |
29 4.2 |
690 100.0 |
平成 13 年 |
件数 比率 |
335 46.2 |
319 44.0 |
1 0.1 |
0 0.0 |
32 4.4 |
38 5.2 |
725 100.0 |
平成 14 年 |
件数 比率 |
373 43.7 |
374 43.8 |
1 0.1 |
0 0.0 |
66 7.7 |
39 4.6 |
853 100.0 |
(3)医事関係訴訟事件の認容率
同じく最近10年間の医事関係訴訟事件の認容率の推移は、表3のとおりである。
10年間の平均でみると、医事関係訴訟事件の認容率は、38.6%で、通常訴訟事件全判決の85.9%はもちろん、そのうちの証拠調べ実施事件(71.1%)と比較してもかなり低い。しかし、医事関係訴訟事件においては、表2にあるとおり、和解件数の割合が通常訴訟事件よりもかなり高いことを考えると、この種事件の実質的な認容率は、判決による認容率が示すほど低くはないと考えられる。
また、年度別に各事件類型の認容率の推移をみると、通常訴訟事件の全判決では漸減傾向にあるのに対し、医事関係訴訟事件では横ばいないし増加傾向にあり、この傾向は、昭和51年から昭和62年までの12年間の平均認容率が、通常訴訟事件の全判決では86.5%、医事関係訴訟事件では34.2%であったのと比較すると一層明らかである。
■ 表3 (平成5年〜平成14年)
| 年 度 | 新 受 | 既 済 | 医事関係 |
| 平成 5 年 | 86.5 | 73.9 | 31.1 |
| 平成 6 年 | 86.6 | 73.6 | 39.9 |
| 平成 7 年 | 86.2 | 72.9 | 39.0 |
| 平成 8 年 | 86.0 | 72.5 | 40.3 |
| 平成 9 年 | 85.8 | 71.4 | 37.3 |
| 平成 10 年 | 86.1 | 70.7 | 44.0 |
| 平成 11 年 | 86.1 | 69.9 | 30.3 |
| 平成 12 年 | 85.2 | 68.7 | 46.7 |
| 平成 13 年 | 85.3 | 68.7 | 38.5 |
| 平成 14 年 | 84.9 | 68.2 | 38.6 |
(4)医事関係訴訟事件の診療科目別受理件数
同じく最近10年間の診療科目別受理件数の推移は、表4のとおりである。
受理件数を診療科目別にみると、内科、外科、整形・形成外科、産婦人科の順に多く、ついで歯科となっている。
また、3年間の推移を診療科目別にみると、内科、外科、整形・形成外科、歯科が増加傾向にあるが、その他の科目は概ね横ばいである。
■ 表4 (平成5年〜平成14年)
| 平成12年 | 平成13年 | 平成14年 | |
| 内 科 | 178 | 215 | 241 |
| 小 児 科 | 24 | 19 | 26 |
| 精神科(神経科) | 29 | 29 | 27 |
| 皮 膚 科 | 8 | 8 | 18 |
| 外 科 | 177 | 163 | 210 |
| 整形・形成外科 | 109 | 133 | 140 |
| 泌尿器科 | 13 | 17 | 18 |
| 産婦人科 | 114 | 108 | 113 |
| 眼 科 | 27 | 29 | 15 |
| 耳鼻咽喉科 | 20 | 22 | 12 |
| 歯 科 | 39 | 49 | 60 |
| 麻 酔 科 | 2 | 13 | 6 |
| そ の 他 | 48 | 56 | 36 |
| 合 計 | 788 | 861 | 922 |